2ntブログ

ねことヘアピン

唯梓SS中心に自由気ままに綴るブログです。

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

【唯梓連載「梓の○○」シリーズその2 梓の夢想@後編】

【唯梓連載「梓の○○」シリーズその2 梓の夢想@後編】





あの夢を見てからと言うもの、私の思考と欲望は欲張りになっていた。
唯先輩を見ているだけじゃ、抱きしめられるだけじゃ、頭をなでられるだけじゃ、全然足りない。
もっと欲しい。夢の中の先輩に、また“キス”して欲しい。
今日の部活中、私は演奏中も、ティータイムも、先輩の唇ばかりに目がいってしまっていた。
家に帰ってからも、いつもはギターの練習をするのに、今日は真っ先にベットに寝転がり、目を瞑り先輩とのキスばかり妄想していた。



………
……






そんな事をしているうちにもう24時を過ぎている。そろそろ寝なきゃいけない時間だ。
私は枕の下から例の写真を取り出す。
そしてじっと写真の中の唯先輩を見つめて――


「今日も絶対出てきて下さいね」



そう写真の先輩に語りかけながら私はキスを落とした。




夢でまた先輩に会えるように―――
















ここは何処だろう。知らない部屋だ。
でもここには間違いなく、唯先輩がいる。
“匂い”でそう確信した。
ここは唯先輩の匂いでいっぱいなのだ。
私は部屋の中に居るはずの先輩を必死に探す。




『待ってたよ。あずにゃん』




後ろから聞こえた声に、私はバッと振り向く。
そこには唯先輩が立っていた。



『唯先輩…!』




(やっぱり居た…!唯先輩…会えた…また会えた…!)




私は嬉しくて胸がきゅーっとなる。




先輩はベッドに座ると、手をちょいちょいとして私を呼んだ。
私は躊躇わず先輩に近づく。
手を伸ばせば届くぐらいの距離になった瞬間、いきなり先輩は私の腕を掴み、グイッと乱暴に引き寄せ隣に座らせた。




『いたっ!…もうっ、何ですか急に!痛いですよ!……って先輩?』




『…………』




何も答えずに先輩は私を見て笑っている。
先輩の笑い方は、何か企んでいるような感じだった。



『せ…先輩…?』



私は何となく危険を感じる。
私の片腕は先輩に掴まれたままだ。




『あの………ッきゃあ!!』




先輩の顔を覗き込もうとしたら、いきなり肩を強く押され、ベットに押し倒された。
先輩は私の上に馬乗りになり、私の両手首をがっちりと両手で押さえる。
そんな乱暴な先輩に驚いて、私は思わず先輩の事を見上げる。すると先輩の目は、獣の目をしていて、私の事を捕らえていた。
私の体は動かない。動けない。蛇に睨まれたカエル、もといライオンに睨まれたネコ状態だ。




『ねぇあずにゃん。キスしたいって言って?』




先輩は私から目を離さないままそう言ってきた。




『えっ…?』




『ほら、はやく、言って?』




掴まれている先輩の手の力が強まる。
今の先輩はなんだか怖い、素直に従った方が良いだろう。
私は震える声を振り絞った。




『………せ、先輩と…………“キス”したいです…』





『…ありがと』




何故お礼を言われたか、私は理解できなかった。
それよりも今の先輩の雰囲気が怖くて、体が震えてしまう。
そんな震える私を見て、先輩は少し固まると、手首を掴んでいる手の力を少し緩めた。

そして―――



『ちゅっ』




『んっ…』



先輩は私のほっぺに軽くキスをした。
さらに頬から唇の近くに掛けて、軽いキスの嵐が降ってくる。



『ちゅっ、ちゅ、ちゅっ、…ちゅ、ちゅちゅ…』




『ん‥んっ…ん…くふふ、くすぐったいです』




先輩があまりにもちゅっちゅとキスしてくるものだから、私は少しくすぐったくなってしまう。
目を細めながら先輩を見ると、先輩はいつもの優しい綺麗な瞳に戻っていた。
私は心の中でホッとする。
私の中にあった先輩に対する恐怖感がサッパリとなくなり、ただただ先輩が愛おしいという気持ちだけが残る。
私はキスがくすぐったくて笑っていたら、先輩はいきなり私の唇をちゅっと吸ってきた。



『ちゅぱっ』



『んちゅっ』




先輩の唇に引っ張られて、私の唇は先輩に持っていかれそうになる。
先輩はある程度私の唇を引っ張ると、パッと離した。
すぐ離される唇に私はもどかしく感じる。
私達は見つめ合う。
私はもう笑ってない。先輩も真顔だ。
先輩は顔を近づけ、もう一度ちゅっと唇を吸ってきた。



『ちゅーっ』



『んぅ~っ』




さっきよりも強く吸われる。
唇が取れてしまうかと思うほどだ。
先輩は私の唇を念入りに吸い、また離した。
ちゅぱっと厭らしい音が部屋に響く。
先輩は私に被さっていた体を一旦離すと、私の手首を掴んでいた手を離し、直ぐに私の手に絡めて握りしめてきた。
俗に言う“恋人つなぎ”ってやつだ。




(先輩の手…私よりも大きい…それにすごく熱い)





絡めている両手を離さないまま、先輩は私にゆっくりと体重を掛けてくる。
胸が触れ合ってお互いの心臓の音が聞こえた。
私の早く打つ鼓動に、先輩の鼓動が重なる。まるで1つの生き物になったみたいだ。


そしてそのまま先輩は唇を私の唇に強く押し付け、ピクリとも動かなくなった。
私は一生懸命鼻で息をする。先輩も鼻で息をしている様で、顔に当たる二人分の鼻息が熱い。

何分間そのままの状態が続いたか分からない。
ふいに先輩が唇を押し付けたまま、ハッと口で息を出した。
唇に先輩の息が掛かり、私もつられて口で呼吸をしようとする。
その瞬間、私の口の中に先輩の舌が侵入してきた。



『ちゅるっ、ん…むちゅっ、れろ…』



『んっ、くちゅっ…ちゅぱっ…んあっ…』




先輩は私の舌を夢中で絡める。私はそんな先輩から逃げる。


逃げる。追いかける。逃げる。追いかける。


そんな事をし続けているうちに、いつの間にか私の舌は先輩に捕まっていた。



『じゅっ、じゅる…んむっ、ちゅーっ!』



『んぐっ、んふぅ、んっ!んんーっ!?』



口から舌を引っ張り出されたかと思ったら、思いっきり舌を吸われた。
私は口から溢れる唾液を止めることが出来ない。
先輩はそんな私の口の端から伝う唾液に吸いついた。



『ちゅぱっ、…ふぅ、…ねぇ、あずにゃん…』



『はぁ、はぁ…しぇんぱ…』




うまく呂律が回らない。私の舌は疲れてヘタってしまっていた。
なんだか頭もうまく回らない。意識が遠くなるのを感じる。


そんな私を見て、先輩は目を見開いた。



『あず……あ…ゃ…』



耳の遠くから先輩の声がうっすらと聞こえる。

でも先輩の声は私に届く事はなかった―――











To Be Continued






ぎ、ぎりぎり間に合いました。
ここまで読んでくれて有難うございます!
ちゅっちゅしてるシーンは書いてて楽しいですw
この次もまだあずにゃん視点ですが、どうぞマッタリとお付き合い下さいませ♪

とりあえずお風呂入ってきます…

| 【「梓の○○」その2 梓の夢想】 | 23:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

【唯梓連載「梓の○○」シリーズその2 梓の夢想@前編】

あなたの柔らかい髪、優しい目、良い匂いのする温かい体。
あなたの全てが愛おしい。
見ているだけで幸せ。一緒にいるだけで幸せ。
好き、好き、大好きです。大好きなんです。
もっともっとあなたとの時間を過ごしたい。


だから、夢でもあなたと一緒にいたいんです――






【唯梓連載「梓の○○」シリーズその2 梓の夢想@前編】








季節は6月中旬。
この間の騒動(?)からこの短期間で、私達メンバーの仲は以前よりはるかに仲良くなっていた。
自分の気持ちに気づいてからというもの、私の唯先輩への想いは大きくなるばかりでいっこうに留まる気がしない。
もちろん前よりは唯先輩と私の距離も縮まったと思う。
でもそれは、先輩・後輩という関係での距離だ。
この前「覚悟して下さい」って(心のなかで)宣言したばかりなのに、実際は何もしていないし、行動にも移していない。



(だって具体的にどうすればいいのか分からないし…)




唯先輩は鈍感だし、多分私の想いには気づいていないだろう。
いや、そこは気付かれても困る気がする。



(私の事気持ち悪いと思われるかもしれないし…もし最悪、この関係が崩れてしまったら…)




そう考えると(今はこのままでもいいかな)と思ってしまっている自分もいる。



(これ以上望んだら、罰が当たる気がするしね)




そう、これは現状維持なのだ。そう自分に言い聞かせた。


決してヘタレなどではない。


断じてヘタレなどではない。





(今の関係で、十分だもん…幸せだし)














今日も無事1日が終わり、私は寝る支度をしていた。




(へへへ…今日はいつもより唯先輩と過ごせた気がする。)





パジャマに着替え、今日の唯先輩の事を思い返しながらふらふらとベットの方へ向かう。





(抱きしめ&頭なでなでのコンボまでしてもらえたし…はふ…幸せだよぅ)





私はぽてっとベットへ寝転がり、そのまま頭をずりずりとずらしながら、枕が置いてある位置探す。
頭が無事枕へと到着したところで、私は1日の大事な締めに取り掛かるために、枕の下から“あるモノ”を手探りで取り出す。




「ぇーと…あっ!あったあった。」




この“あるモノ”とは唯先輩の写真だ。



軽音部のみんなで写した写真は何枚かあるけれども、私は唯先輩だけが写っている写真を持ってはいなかった。
先輩だけを写真で写すのには、かなり高度な技術が必要とされる。
「唯先輩だけ写真撮らせて下さい」と言った日には、間違いなく律先輩からからかわれるのが目にみえていた。
喉から手が出るほど欲しくても、勇気がない私は諦めていたのだ。


ではこの写真はどう手にいれたのか?
この写真は先日、私の靴箱に入っていた。汚れないように透明カバー添付という豪華さで、だ。
誰の仕業かだいたい想像つくけど、これは有り難く頂戴した。




(だってこんなに可愛いんだものね)




私は写真を見つめる。
写真の中の先輩はカメラ目線で、まるで先輩と見つめ合っている感覚に陥る。
それだけで私の胸は、幸せな気持ちでいっぱいになった。



「おやすみ、ゆいせんぱい」




私は寝る前の大事な儀式、写真の唯先輩に「おやすみ」を言うというミッションを無事こなし終えると、大事に元ある場所に戻した。



「…」



ふと、ある事を思いついた私は、写真をもう一度取り出し、誰も居るはずがないのに辺りを確認する。
そして―――



「ちゅっ」



唯先輩の写真に軽くキスをしてしまった。




「キ、キスしちゃった…」



頭がカッカしてきた私はボフッと頭まで布団を被り丸くなる。





「ん…ゆいせんぱ…」





私の眠気は限界だったのだろう。目を閉じると、意識は簡単に現実から遠のいていった。

















『…ゃん……あず…』





『…?』




誰かに肩を揺すられている。
せっかく人が気持ちよく寝ているというのに、誰だこんな事をするのは。





『…ずにゃん…あずにゃ…あずにゃん』





聞きなれた声に、私の意識が覚醒してくる。このほんわかした声は唯先輩だ、間違いない。
私が唯先輩の声を間違えるわけが無い。
それに、私のことを“あずにゃん”と呼ぶのも先輩だけだ。



それより先輩が私を呼んでいる。早く起きないと――





『んっ………ゆいせんぱぃ?』




『あずにゃんやっと起きたよ~』




『ごめんなさい眠りが深かったみたいで…。…それであの、ここ何処ですか?』




『部室だよ~。もうっ、あずにゃん練習中に寝ちゃったんだよ?』




少し困っているような唯先輩の顔が目の前にぼんやりと見える。




『あっ、そうだったんですか…。ごめんなさい』




私は状況を確認するために周りを見渡す。
どうやらソファーで眠ってしまっていたみたいだ。
空は真っ暗になっている。何時間ぐらい寝てたんだろう?




『そういえば…他の皆さんは…?』



『先に帰っちゃったよ~』



『そうですか…』



私は体を起き上がらせる。
ソファーに座り、横になって眠ったせいで少し癖がついてしまった髪の毛を整えていると、今まで膝立ちをしていた先輩が、腰を上げて立ち上がり、くるりと後ろを向いてボフッとソファーに腰を降ろした。



(…な、なんか近い…)



ソファーは結構広いのに、先輩は私のすぐ隣、腕が触れ合うぐらいの距離に座っている。
そして先輩は、ソファーの背もたれにだらーっと体重を預けた。



私は髪を整えている振りをしながら、そんな先輩を横目で盗み見する。
先輩は頭を完全にソファーに預け、顔を天上に向け、目を瞑っていた。



(先輩、少し髪伸びてる)



ソファーの背に広がる柔らかそうな髪を見ながら、私はそんな事を考え、眼を閉じている先輩を見つめていた。




『何見てるの~?』




先輩は目を閉じたまま私に話しかけた。
私は思わずバッと先輩から視線を逸らす。



『み、見てなんかいません!』



『そう?』



『そうです!』



私がそう言うと先輩は納得したみたいで、「ん~ん」と声にならない声を鼻から出し、また静かになった。




(びっくりしたぁ…なんで気づいたんだろ。いつも見ていても絶対気づかないのに…ましてや先輩、目閉じてたのに)




私は赤くなった顔を冷ますため、頬を両手で覆った。
手のひらに頬の熱が吸収されていくのが分かる。
私は目を瞑って、さっきまで見つめていた先輩を思い出す。
いつものぽわぽわな先輩も好きだけど、目を閉じた先輩は新鮮で、素敵だった。
ふわふわな栗色の髪の毛、長い睫毛、そして、ぷにぷにで柔らかそうな唇。



(あの弾力のありそうな唇…触れたらどんなに気持ちいいんだろう)




その唇に触れる方法と言えば…



(やっぱ…キス…だよね………―――ハッ!)




私は不健全な妄想をしそうになり、慌てて首を振る。




『…あずにゃん、私とキスしたくなっちゃったの?』




『…………………えっ!?』




いきなりの先輩の発言に驚き、私は体ごと先輩の方を向く。
なんで私が考えていた事を先輩が…。
まさか妄想していた事を口に出してしまっていたのだろうか。
戸惑いながら先輩の顔を見ると、案の定先輩はまだ目を瞑ったままだった。




『だから~私とキスしたいんじゃないの?』




ようやく先輩は目を開け、こちらを向きそう言う。




『い、いや、それは聞こえてます!2回も言わないで下さい!
そうじゃなくて、なんでいきなりキ、きs』




『え~?だってキスしたくて私のこと見てたんじゃないの?』




先輩は首を傾げ、不思議そうな顔をして私に聞いてくる。




『ち、違います!……確かに先輩のこと見ていましたが…』




『なんで見ていたの?』




次から次へと問い詰められているせいで、私は少し頭が混乱していた。




『な、なんでって…と、とにかく見ていただけなんです!』




『ん~…じゃ~あずにゃんは見るだけでいいの?見ているだけで満足なの?』





『は、はい!私は見ているだけで幸せなんです!』




(思わず口から出ちゃったけど、なんか私、さっきから変なこと言ってる…。「見ているだけで幸せです」って、「好き」って言ってるようなもんじゃ…)




『ふ~ん…ねぇ、あずにゃん』




先輩は、いつもの声のトーンより低い声を出し、私の目を見つめてきた。
先輩の目は、まるで私の心を見透かしているようだった。




『ひゃい!?』




いきなりの先輩の変わりように私の声は裏返ってしまう。




『本当は次に進みたいんじゃない?』




『つ、次って…?』




『キス。してみたいんじゃない?見ているだけじゃ我慢できなくなっちゃったんじゃない?』




『……』




先輩が言っている事が図星だったので、私は思わず黙ってしまう。
先輩の言う通り、私はここ最近見ているだけでは満足できなくなっていた。
でも私はどうすればいいかわからなくて、自分の気持ちに嘘を付いて誤魔化していたのだ。




『あずにゃん、素直になって。キスしたいの?したくないの?』




耳元に低い甘い声で囁かれる。
先輩の吐息が耳にかかって、私の肩はビクッと上下した。




『ッ…………たい』




緊張しすぎて声を上手く出す事が出来ない。




『ん?声小さすぎて聞こえないよ』




もうすでに、私の答えは一択しかなかった。




『…たいです。先輩と、キス、したいです』




『いいよ、しよっか。あずにゃん』




私の答えに対し、先輩はあっさりと了承し、私の顎を手でクイッと持ち上げた。




『あっ…』




顎を捉えられ真剣な目で見つめられたせいで、私は先輩から目が逸らせない。





『どこにキスしてほしい?ここ?ここかな?』





先輩はそう言いながら、人差し指で私の額とほっぺを指す。




『それとも、ここ?』




先輩の指はゆっくりと私のほっぺをなぞり、唇に到着した。




『そ、そこ…』




私はすかさず声に出す。




『ん?ここ?』




指で唇をぷにっと押された。




『…はぃ…ここが、いいです』




私がそう言うと同時に、先輩の唇が私のそれと重なった。



『ちゅ…』




『んっ…』




初めて触れた先輩の唇は、柔らかく湿っていた。
私の唇にしっとりと吸い付いてきて、とても気持ちがいい。




(私…先輩とキスしてるんだ…)




『…んちゅ…ちゅっ…』




『んっっ…んぅ…んん~っ』




もちろん私はファーストキスだ。先輩が私の初恋なのだから。
初めて、という事もあり、どうやって息を吸えばいいかまったく分からない。
私はうまく酸素を吸えなく、息が苦しくなっていた。
そんな私の事など知る由もない先輩は、さらに深く口を押し付ける。




『ちゅっ…うちゅ…ちゅ…』




『んちゅっ…ん…ふ‥ぷはっ、ふぁっ、せんぱ!ぷあっ!』




息が出来ないのに耐えられず、私は先輩の唇から離れてしまった。




『ありゃ、もう終わり?』




『はぁ!はぁっ!はぁっ、…はぁ、はぁ…』




私の肺は、酸素を取り込むのに忙しなく上下する。
心臓も煩いほどバクバクと脈を打っている。



『他にしてほしい事は?』



先輩は休む暇もなく、私に次の誘惑を振った。




『…他に…』




必要な酸素を取り込んだ事により、呼吸が大分落ち着いてきた。




『うん、なんでもいいんだよ~?』




ボーッとうまく働かない頭で、先輩を見つめる。
愛しい、愛おしい先輩が、なんでもしてくれるってさ。
私の脳は「この人が欲しい、欲しい、欲しい」と指令を出した。



『“好き”って言ってほしいです。強く抱きしめてほしいです。“あずさ”って呼んでほしいです。もっともっと…キスしてほしいです…』



私の口は止まらない。
もう先輩の事以外何も考えられなかった。




『あははっ、あずにゃん要望多すぎだよ~。それにキスはさっきしたよ~?』



先輩は笑いながら私の唇を指で撫でる。
唇から伝わる先輩の指の感触に、私はプルッと震えてしまった。




『でもいいよ、“あずさ”。なんでも言う事聞いてあげる』




『!』




名前で…“あずにゃん”ではなく“あずさ”と呼んでくれた。
それだけで私の鼓動は強く高鳴る。
そしてゆっくりと、先輩の綺麗な顔が近づいてきた。




『あずにゃん…目、閉じて?』




私は素直に目を瞑り、キスがし易いように唇を尖らせ、先輩のキスを待つ。
しかし先輩の息が顔に当たるのを感じた瞬間、なぜか先輩はいきなりパッと私から離れてしまった。
不思議に感じ私はゆっくりと瞼を開ける。
するとそこには悲しそうな顔をしている先輩がいた。



『ごめんね、――だっ― ー…』















ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ



「バンッ!」



耳障りな音に私の手は自然にその音を出している元凶を叩く。




リリリリリジリッ


目覚まし時計の音が止まると同時に、私はむくっと体を起こした。
私は二度寝などしない。寝起きは良い方なのだ。



「ゆ、夢…」



今更ながら、改めてさっきまでの事は夢だと思い出す。
すごいリアルだった。今でも夢だと信じられないほどだ。
感触とか、匂いとか、すごく――



(すごく…気持ちよかった…な…)




何度か唯先輩の夢を見た事はあるが、こんなにすごいのは初めてだった。
目覚ましが鳴らなかったら、一体どうなっていたのだろう。
そんな事を考えながら、私はむずむずする太ももを擦り合せていると、ふと下半身に違和感を感じた。



(なんか…気持ち悪い…)



私はパジャマのズボンを引っ張り、異変を探す。




「!?な、なにこれ…!?」




そこには、パジャマにまでシミをつくっている、ぐっしょりと濡れた私のパンツがあった。







【梓の夢想@後編】へ続く。

| 【「梓の○○」その2 梓の夢想】 | 23:50 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |